医療費の未払いのある患者はどのようなタイプが多いの?
医療費の未払いが発生する原因はいくつかありますが、どのような原因が多いでしょうか。
次のグラフは、平成20年に実施された厚労省の全国2844病院を対象とする「未収金に関するアンケート調査報告」の未収金の発生理由の内訳です。

このグラフからは、未収金の理由のうち、「生活に困っており、自己負担分の医療費支払い資力なし」(生活困窮型)が占める割合は、金額ベースで16.0%(2位)でした。
この生活困窮型の患者の未収金を抑え込むことができれば、効率的にご自身の病院・クリニックの未収金を減らせることができます。では、その対応策をみていきます。
生活苦の患者のための医療制度とは?
高額療養費制度・限度額認定証
高額療養費制度とは、支払った自己負担額がその患者の上限額が超えた場合、申請により払い戻しを受けられる制度です。
高額療養費制度の上限額は、次の表のように加入者の所得水準によって区分されています。
たとえば、69歳以下で住民税非課税の方であれば、上限額は3万5400円となり、医療費の負担を大きく減らすことができます。


ただ、高額療養費制度は、加入者の申請が前提となりますので、申請を忘れないよう患者に周知することが重要です。
なお、差額ベッド代、食事代などは高額療養費の対象外です。また、医療費の払戻しまでには、受診した月から少なくても3か月程度の期間を要します。
入院などで自己負担額が限度額を超えることが予想される場合には、患者に限度額認定証を取得してもらっておくとよいでしょう。限度額認定証があれば、窓口で自己負担金の支払いを高額療養費の上限額までとすることができます。
限度額認定証も事前に申請をする必要があるので、入院前に患者が加入している医療保険に問い合わせてもらいましょう。
一部負担金減免制度
災害や失業、事業の廃業などで、所得金額が減少し、一部負担金の支払いが困難になった場合に、申請から3か月を限度として、一部負担金の支払いを免除・減額・猶予するものです。東日本大震災や熊本地震の際に多く活用された制度ですが、震災以外にも事業の廃止などで生活に困窮した場合に活用できます。
ところで、患者の一部負担金が減免されれば、医療機関はその分の収入がなくなるのではないかという疑問が生じます。しかし、結論としては、減免された額は、国保連などの審査支払機関から診療報酬として支払われますので問題ありません。
なぜかといいますと、そもそも保険者が支払う診療報酬は、診療報酬点数で導いた全体の給付額から、患者の一部負担額を取り除いた額と定められています(国民健康保険法45条1項、4項)。そのため、一部負担金の額が免除されると、その分だけ保険者から支払われる診療報酬が増えることになり、結果的に収入は減少しないのです。
患者が災害等の事情で生活に困窮してい場合には、患者に一部負担金減免制度を利用するようすすめてみてください。ただ、一部負担金減免制度は、各自治体によって運用が異なりますので、事前に役所等に確認をとったほうがよいでしょう。
無料低額診療事業
無料低額診療事業とは、都道府県に無料低額診療事業の届け出をした医療機関が、生計困難者のために無料又は低額で診療をする事業です。
低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者などの生計が困難な方が対象で、経済状況に応じて、医療費が無料又は減額となります。生活保護の申請中の方や、生活に困窮しているものの生活保護の要件は満たない方なども利用できるケースがあります。
無料低額診療事業を実施している医療機関は、インターネットで検索することができます。患者から生活が困窮して医療費の支払いが難しいと相談を受けた場合には、無料低額診療事業実施施設に紹介することで未収金のリスクを回避できますし、患者も医療費の不安を抱えることなく受診できるといえます。
まとめ
これらの他にも、未収金を予防するための医療制度は、様々なものがあります。
病院・クリニックの未収金を減らすとともに、生活困窮者が支払いに悩むことなく安心して医療を受けられるようにするためにも、各種医療制度を適切に活用していきましょう。
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